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カイコ-バキュロウイルス系

バキュロウイルス発現系の再評価

昆虫細胞を用いたバキュロウイルス発現系(BEVS)が、バイオ医薬品開発の現場で再評価されています。哺乳類細胞系と比較しながら、3つの視点から考えます。

高分子タンパク質の正確な発現

数百kDaを超える高分子タンパク質は、哺乳類細胞では翻訳効率の低下や凝集が課題となります。バキュロウイルスは大きな外来遺伝子を収容することができるため、高分子タンパク質の安定発現も得意としています。昆虫細胞の強力なタンパク質合成能を活用し、巨大な分子であっても正確な折り畳みを伴った状態で大量に生産可能です。

複雑な三量体・多量体の形成

複数の異なるサブユニットから成る三量体や多量体タンパク質は、各因子の発現バランスが品質を左右します。BEVSは、一つのバキュロウイルスに複数の発現カセットを組み込む、あるいは複数のウイルスを共感染させることで、複数のタンパク質を同時かつ最適な比率で発現させ、安定した複合体を形成させることが可能です。

哺乳類系と同等程度に、生理活性を維持した正確な三量体構造を効率よく構築できます。

このような特徴から、BEVSは、巨大分子であるウイルス様粒子(VLP)や、三量体構造を形成するウイルスのスパイクタンパク質(SARS-CoV-2等)の生成も得意としています。

細胞毒性タンパク質の克服

宿主細胞の生存を脅かす毒性タンパク質の発現は、哺乳類系では細胞の増殖阻害や細胞死を引き起こすため、安定生産が課題です。対してBEVSは、細胞増殖が停止した後の感染後期に発現がピークとなる「ポリヘドリンプロモーター」を利用します。毒性タンパク質が作られる時間を最小限(虫が死ぬ直前)に抑えることができ、高い生産性を確保できます。

このようにBEVSは、現在のバイオ医薬品開発において、哺乳類細胞では突破できない壁を打ち破る切り札として再評価が進んでいます。